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南チロルの機械利用 ②

草刈り機

防除機同様に南チロルにおける草刈機も牽引方式で行われている。

草刈機はトラクターで牽引し草刈と同時に除草剤を散布することも出来るようになっている。

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その他トラクター関連機器

トラクターには前述の防除機や草刈機のほか様々な機器の装着が可能となっている。

南チロルをはじめヨーロッパでは、日本のように軽トラックを見かけることは殆どなく、収穫した果実の運搬などもトラクターのトレーラーで行っている。

南チロルでは、リンゴを牽引したトラクターが高速(40~50㎞/h位)で走行している光景が当たり前となっている。

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また、園地内ではトラクター後部に装着するリアリフターがリンゴの運搬に活躍をしており、園地の中のコンテナを回収しトレーラーに積み込みを行っている

高所作業車

 樹高が3.0~3.5mになるトールスピンドルでは高所作業車が必須となる。南チロルの平坦部は圃場が平らであるため、通路の両側同時に作業のできる高所作業車が使われている。

 高所作業車は、剪定作業・防雹ネットの設置・誘引作業に加え、収穫時の台車としても活躍をしている。

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BerMarTEC HPより引用
収穫支援機

 大規模生産者収穫作業は高所作業車に収穫用機器をセットし、6~7人程度で収穫を行っており、収穫は一挙穫りである。収穫用機器は収穫したリンゴを載せるレーンを上下段に2レーンずつ計4レーンを搭載しており、作業者は収穫したリンゴをレーンの上に載せるだけである。その後レーン上を搬送されたリンゴは機械の上部にあるバッケトに送られ、その後300㎏コンテナー(ビン)に静かに投入される。

 投入時は高い位置からリンゴを落とすのではなく、コンテナの低い位置まで搬送しゴムシート上を滑るようにしてコンテナに張り込んでいる。

また、コンテナに均一に張り込みができるよう、コンテナはゆっくりと回転をしている。

 日本に比べリンゴが小さいこともあるが、ほとんど押し痛みなどは発生していない。作業機械を利用した場合、一人当たり1500㎏/日の収穫が可能である。5人で作業した場合、1日で10aの収穫を行える計算であり、高い収穫能力となっている。

 

 一方、規模の小さい生産者は、比較的簡易で通路の両側の作業可能な高所作業車を活用し収穫を行っている。収穫は、直接300㎏コンテナーに入れるのではなく、通常の10㎏程度のコンテナで収穫をし、一杯になったところでコンテナに移している。高所の収穫物を下まで降ろすのは人力であるため、負荷は大きいと思われる。

この方式であれば、日本での導入も可能であると思われる。

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視察先の農園の経営概況など

 前述したようにリンゴ10haを栽培する大型生産者である。基本は家族労働である。雇用は常時1名に加え、収穫・摘果など作業のピーク時には、チェコからのアルバイトを雇用している。チェコ・ポーランド等からの労働者は年間5万人程度が入ってきており、その雇用などについてはトレンティーノ=アルト・アディジェ自治州が管理している。労賃は7~8€/h(1€=140円 1,000~1,100円程度)が本人に支払われるが、保険などの費用を加えると11~12€/h(1,500~1,7000円)とかなり高額である。また、季節労働者を含めこの農園では宿泊施設も完備している。労賃が高いことから、機械化により手作業の軽減を行うことでコストの削減となっている。

 昨年の生産者への販売価格は、38€/㎏(53.2円/㎏)であった。園主は日本の果実価格が高いことを羨ましがっていたが、現在ロシアとの政治的な問題から下位等級品の輸出がストップしていることもあり、ヨーロッパ全体のリンゴ価格が低迷していることも価格安の一因となっている。平均反収6tで試算をすると、この農園では約3,200万円の販売金額となる。価格面では日本に比べ安価であるが、収量性の高さが経営を成り立たせている。また、作業小屋の横にかつて大木のリンゴ栽培の当時の40段一本はしごが保存をされていた。

 トールスピンドル仕立にしたことで収量性の向上に加え、40段ものはしごを使う栽培から前述のように機械を利用した作業に転換できたことで、労力も大きく削減ができ経営面でプラスになっている。

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南チロルでのリンゴにおける機械利用のまとめ

 リンゴ栽培での機械利用は、作業支援的な要素が強いが、広範な作業において機械が使われていることから見て、一定レベルの機械化一貫体系が整っている。こうした機械利用を可能としているのが、高密植による栽培のシステム化に起因をしており、壁の薄いトールスピンドルならではの体系である。日本の喬木やM.26の古木などでは、機械を利用しても稼動効率が下がるだけで、労力軽減などの効果は出にくい。

  一方、断根処理を行うような土壌関連機器は従来の栽培方法では必要性が低かったが、高密植栽培においては樹勢コントロールが必要なことや改植サイクルが短いことなどから、これらの作業機が必要になると思われる。

 

 機械利用は、日本のスピードスプレヤや乗用モアーのような専用機ではなく、トラクターの動力を最大限に活用することで効率的な機械利用を行っている。機械への投資費用は詳細に試算をしないと不明であるが、多様な作業機を整備した場合、投資金額はかなり高額になると思われる。従って、機械を導入する場合、機械利用による労賃の削減効果・機械の能力に見合った栽培規模などの試算が重要になると思われる。

 

 高収量を得られる高密植栽培においては、収穫作業の効率化と収穫したリンゴを如何にして運搬するかは大きな課題である。南チロルのようにウォーターダンバー方式の選果ではないため、300㎏コンテナーでの収穫は現実的ではないが、収穫の支援機器の検討やトラクターの装備するリアリフターなどの導入は日本でも十分に可能であると考えられる。

 

 今後、経営規模の拡大を考える上では、雇用の確保とあわせ機械の効率的な利用も視野に入れる必要があり、機械の友好的な活用方法や機械に関わる投資などの検討を進めることが重要と考える。                                       

2017 JA長野県営農センター イタリア調査報告書より引用 一部改

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